イギリスの住宅事情

05 September 2018

 
 20181012_102705.jpg20181006_170047.jpg三ヶ月ほど前に一軒先の家の前に売家(For Sale)の看板が立ちました。それが、先週 "Sold" と換わっていましたので買い手があったのでしょう。6年前位に引っ越してきて、庭もガーデンデザイナーに頼んようできれいに変身してからいくらも経っていないのです。私達は持ち主とは直接言葉をかわしたこともないのですが、二軒の間に位置しているお隣の話し好きの奥さんから情報が入るのです。どうして近所の家の売買に私達に興味を持つのか、というと、そこの家のネコが我が家に入り浸っていたのです。ジョンが庭に来ていたネコの相手をしているうちに家の中に入り始め、そのうちに餌をあげるようになり、ネコ専用の椅子まで用意したら、益々うちで過ごす時間が長くなったのです。持ち主のご夫婦は二人共家を空けることが多いらしく、そのさびしさもあったのでしょう。看板が "Sold"になってから5日後、ネコが顔を出さなくなりました。その翌日、大きな引越し用のトラックがその家の前に止まっていました。 他人様のネコとはいえ毎日のように来ていたので、情も移り、ついネコがいつも顔を出していた台所の窓に目がいってしまいます。  上の写真が二億円で売られた家です。
 今回はネコの話ではなく住宅がテーマでした。その家が売りに出されている間、売値がどの位だったのかちょっと興味を持ってネットで調べてみたら、何と130万ポンド(約2億円)。お隣さんと壁が繋がっているセミデタッチドで、ベッドルームが6つ、正面の写真で見るよりずっと広いです。 お隣の奥さんによると、もう少し値段が上の設定だったのですが、さすがに中々売れず、この値段になったそうです。それにしても、庭もそれほど広くないし、屋根付きのガレージもない家にこの値段、正直びっくりしました。チェルトナムは元々住みたい町として人気があり、不動産は周囲の町よりも高めです。私達が住んでいる地域は昔チェルトナムが繁栄していたヴィクトリア時代に建てられた富裕層の大きな住宅が多いのですが、現在では、一軒の住宅として使われるよりも、大きな家の内部を分割して、いくつかのアパートになっている家の方が多いように見受けられます。建物の玄関に並んだベルで集合住宅とわかるのです。
20181017_144605.jpg最近のイギリスの住宅事情は初めて家を買う若い人にとっては厳しい環境です。全国の住宅の平均値段が20万ポンド(3千2百万)ですが、地方、地域によってかなり違ってきます。最近のニュースでは頭金10%を用意しても希望する家が買えない人が40%もいるそうです。私がイギリスのマンチェスターで生活を始めた1990年代始めの頃は、20歳前後の若い人が頭金なしでもローンを組んで家を買うという話を聞いてびっくりしたものです。四半世紀の間にそれだけ家の値段が上がったということです。始めは安い家を、収入が上がるか、結婚して子供ができ手狭になったら、もう少し大きな家に移る、と用途に応じて家を買い換える意味のプロパティ ラダー(要約すると、安い不動産から始め徐々に買い換えていく、の意味です)という言葉があります。また逆に、子供達が家を出ていくと、夫婦2人用の小さな家に、歳を取ってくると階段がない平屋の家(バンガロー)に移ることもあります。家を移ることにあまり抵抗感がなく、既成の家を買って内装を自分の好みに変えるのがイギリス流です。実際、現在私達が住んでいる家も、かってはお隣さんと続いていたそうです。以前住んでいたご夫婦が3人の息子さんが家を出た後、家を区切って、本体の大きな方を売り、今私達が住んでいる部分(その昔は使用人用だったそうです)に住んでいました。人口が増えているのに、住宅規則が厳しく、新築の家が少ないために住宅不足が原因で値段が上がっているのは事実です。
 20180907_161313.jpg日本でも都会の不動産は地方と比べるとかなり高めですが、イギリスの場合、その違いが別な意味でもっと顕著です。天文学的に不動産が高いロンドンは別格としても、地方都市でも地域によって家の値段が変わってきます。チェルトナムを見ても、住み分けがはっきりしていて、市営住宅が多い地域は、低所得者、失業者やシングルマザーたちのために市が安く貸しているので、どうしても治安が悪くなりやすく敬遠されがちです。また、郊外には大きなお屋敷がずらりと並ぶ地域もあります。もちろん、市の中心から少し離れて拡がる平均的な住宅街が圧倒的に多いのですが。どんな家に住むかでその人のおおよその生活水準が見えてくる仕組みです。
20180907_162523.jpgチェルトナムにも移民とわかる人たちが目立ち、人口が増えてきているのがわかります。20年前に引っ越してきた頃、あちこちに残っていた空き地は、スーパーやお年寄り向けの施設などですべて埋まってしまい、近くにあった広い敷地の建材会社は郊外に移り、その跡地には新築の家が次々と建てられています。厳しい規制も緩めざる負えないようで、車で郊外を走っても、いつの間にか新しく開発された住宅地を目にします。こうした新築住宅はやはり値段も高めで、若い人には中々手が届かないので、普通は賃貸アパートから自立の生活を始めるのは日本と同じでしょうか。
ロンドンでは仕事があっても高い家賃を払えないためホームレスになるケースが増えている、とニュースで報じていました。投資目的で金銭的に余裕がある人が家を何軒も買い、家賃を高く設定しているのも理由の一つだそうです。
日本は都会でも田舎でも空き家が増えているそうですが、単に人口が減っているせいだけではないように思えます。それぞれの国の政策が反映しているのではないでしょうか。同じ住宅問題にしても日本とイギリスでは問題の中身が随分と違っていることを感じさせられます。

真ん中の白い建物は、最近建てられた、大きな、多分ケア付きアパートです。クラフトという大きな会社の本社がバーミンガムに移り、その後にこの建物が建ちました。街の中心地にあり、見るからに高級そうな建物です。現在、入居者を募っていますが、庶民とは縁がない、相当に裕福な人でないと入居は無理なのでは、というのが私の感想です。
 

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