ウエールズへの小旅行

23 June 2017


今年のイギリスはあまり楽しいニュースがありません。ロンドン、マンチェスターでの度々のテロ行為、最近ではロンドンの高層ビル住宅の大火災で多くの人が亡くなりました。30分で火がビル全体に広がり、スプリンクラーも作動しなかったなど、ビルの火災予防に手落ちがあった、と管理するロンドンのボローカウンセル(東京の区に当たる)が非難され、トップが辞任となり、政府まで批判の的になっています。去年の国民投票でイギリスのEU離脱が決まり、新しく首相になったテレサメイがEU離脱に際しての交渉をやり易くするため、と張り切って選挙を実施したのはよかったのですが、結果は政権担当の保守党の敗北、首相の思惑が大きくはずれてしまいました。EUとの離脱交渉にも影響が出る、と言われていたその矢先にロンドン火災が起こり、焼け出された住民達からの非難の矢面に立たされるのを恐れた首相が火災現場に行かなかったこともメイ首相にとってはマイナス要素です。 政治の話題のつもりではなかったのですが、つい。。。 
Wales 2017 014.JPG先週に入っていた宿泊予約にキャンセルが出たので(テロのせいではないです)まとまった時間ができ、天候もよさそうだったので、ウエールズに2泊3日で出かけることにしました。ジョンのお母さんの遺灰を撒きに行くのが目的です。以前から計画をしていたのですが、都合がよさそうな時はいつも天気が悪く伸ばし伸ばしになっていたのです。お母さんが住んでいた家は、ジョンの姪がボーイフレンドと共同で買うことになったので、遺灰の半分は生前可愛がっていたネコ達が埋まっている庭に撒き、残りの半分を昔から夏の休暇で行っていたウエールズの小さな海岸の町に撒くことに決めていたのです。
Wales 2017 011.JPGウエールズの南部はチェルトナムから車で1時間ちょっとで行けるのですが、今回の目的地は北寄りの中部の海岸、ネヴィンという小さなリゾート地で、夏はリヴァプールやマンチェスターから休暇を過ごす人達で賑わうところです。途中、一泊してから翌日に目的地に向かうことにしました。 出発日は朝から快晴で陽射しが強く、しばらく陽の当たるところを歩くと体がジリジリしてくるほどの暑さです。中部ウエールズへは高速道路がなく山岳地帯を迂回しながらの道路なのでかなり時間がかかります。一泊目はDolgellauという名前の小さな町のB&B泊まりとしました。午後3時頃に車で町に入るとタウンセンターの辺りの道路がすべて封鎖されているので、何事かと思ったら、BBCのテレビドラマのロケが行われている、とのことでした。強い陽ざしの中をお葬式の格好をしたエキストラの人たちが集まってロケが始まるのを待っていましたが、全員黒の喪服を着ていて暑そうです。ロケのスタッフに聞いたら、題名が 「レクイエム」 とのこと、納得です。 60年代か70年代のストーリーのようですが、日本と違ってイギリスの街並みは時代が変わってもあまり変化がないので、ロケ地探しにはそれほどの苦労はないかも、としばらくの間見物していました。
翌日、午前中は近くの低い山を歩く予定でしたが、登り始めて間もなく、私が平らな石に足を取られ、登山道の脇のくぼ地に落ちてしまいました。落下した地面が枯葉で埋まっていたため大事に至らなかったのは幸いでしたが、周囲の木の枝に引っかかりながら落ちたせいか、あちこちに打ち身、すり傷を作り、ショックのせいもあり、山歩きは中止して近くの海岸で一時過ごすことにしました。ジョンが、私がすべった登山道からくぼ地まで計ったら2.5メートルもあったそうです。この歳まで随分と山歩きをしてきましたが、こんなことは初めてです。ジョンは歳のせいでとっさの時の反射神経がにぶってきているせいもある、と言っていましたが、そんなことはない、と否定できない自分がちょっと情けなかったのは事実です。
Wales 2017 019.JPG午後はどこにも寄らず目的のネヴィンの町まで直行です。この町がある小さな半島は、Lleyn Peninsula というのですが、LLEYN をクリンと呼ぶウエールズ語独特の発音です。その日の宿はネヴィンから少し離れたB&Bです。夕方、夕食を食べにネヴィンの町に行ったのですが、ジョンが小さい時に毎年のように泊まっていた宿の建物が残っていて、あの屋根裏部屋に泊まっていた、となつかしそうでした。経営していた Mrs.Jones は大分前に亡くなったそうです。ジョンが小さい時に両親が離婚、お父さんからの養育費はなく、お母さんは2人の子供をかかえて一時期、生活面でかなり苦労したとは聞いていますが、そんな生活環境にあっても、夏に親子で一週間休暇を取って海岸で過ごせる、というのは日本人の私にとっては驚きです。自分の子供の頃の夏休みを思い出すと、田舎の祖母の家か、家族で日帰りで千葉の海岸に行ったぐらいです。イギリスの海岸リゾートにはどこでも休暇を一週間、二週間と過ごす人たちのための手頃な料金の宿がたくさんあります。この国ではかなり前から働く人達の有給休暇が保障されていて、だれもが普通に夏休みがとれる環境にあるのは、働き蜂のような日本人にはうらやましい限りです。ジョンのお母さんが子供と一緒に毎年のように来ていた宿のMrs.Jonesとは親戚のように親しくなり、宿を閉めた後も、お母さんは時々ネヴィンを訪れて、一人暮らしの Mrs.Jones の話し相手になっていたそうです。最近こそ、太陽が保障されているヨーロッパ南部のスペイン、ポルトガル等にチャーター便で出かける人が増えて、イギリスの海岸は以前ほどの賑わいはなくなりましたが、昔風の、二食付きのホリデイメーカー用の宿は今でも健在と聞きます。
Wales 2017 020.JPGWales 2017 022.JPGWales 2017 023.JPGネヴィンの近くに大きなゴルフ場はありますが、他には何もない殺風景な海岸で一週間何をしていたのか、とジョンに聞いたところ、海岸の岩場の水溜りで生き物を捕まえたり、海岸沿いに歩いたり、近郊の低い山を登ったりと1人でも退屈することはなかった、と言います。大人はひたすら砂浜に寝そべって、夕方になると、海岸の後ろに控える崖に沿って整備されているフットパスを散策して宿に帰る、天気の悪い日には車で大きな町にドライブがてら出かける、そんな昔風のホリデイの過ごし方はいまでも続いているのでしょう。6月の平日、ウエールズの海岸は人の姿も少なく、砂浜に座って海を眺めているだけでゆったりとした気分になります。
翌日、穏やかな海岸線を見渡せる近くの崖の上の野原に遺灰を撒いて今回の旅の目的を果たしました。ジョンもお母さんに関してはすべて終ったと、肩の荷が降りたようです。
ネヴィンで泊まったB&Bで、翌朝、ダイニングルームで朝食を取りながら同宿の人と話したら、開発もされず、観光客も来ない、店も娯楽施設も少ない、シンプルなところがネヴィンのよさ、としきりに言っていました。

ちなみに、二晩過ごしたB&Bは平日のせいか両方ともお客はすべて60代、70代のカップル、経営者も60代で、それぞれが、B&Bを仕切る奥さん達の個性が色濃く出ていて、小規模ながら同じ仕事を持つ私にはとっても興味深かった経験でした。

帰りは6時間かけて北/中部のウエールズの自然を眺めながらゆっくりとチェルトナムに戻ってきました。

上から二番目の写真は崖の上で遺灰を撒くジョン。

その下の三枚はウエールズからの帰りに寄ったカフェです。カフェの看板の下の文字「ARAGOR]はウエールズ語で
「OPEN」の意味、英語とはまったく異なるケルト系の言語です。 このカフェはクラフトセンターも兼ねていて木工品が並べてありましたが、入り口の近くに置いてあった二つの人形がよくできていて、つい写真に撮ってしまいました。

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