BLOG

Enjoy a day out in the English Countryside

イギリスの医療制度

イギリスの医療制度

2017年4月2日

先週の火曜日にヘルニアの手術のためにジョンが日帰り入院しました。

もう2年も前から手術が必要と言われていたのですが、手術後は最低でも2週間の安静が必要で、この間は車の運転も自転車もだめとのこと、当時から毎週のように母親の介護のために車でマンチェスターに通っていたので、日常の生活には支障がなかったせいもあり手術を先送りにしていました。去年の秋、仕事が落ち着いたので、病院にコンタクトして11月に手術と決まったのですが、病院側の事情でキャンセル、今年の3月初旬に延期されたのです。この時も土壇場で担当医に急を要する手術が入ったとかで、またまたキャンセル、先週の28日にやっと手術の運びとなりました。命にかかわらない手術は、この類のキャンセルはめずらしくなく、ジョンが20数年前に受けた胆嚢の手術の際も一年以上待たされ、そのため患部の周辺が膿んで10cm以上も切る大きな手術となったのです。その時は術後2日目にベッドが足りないからとの理由で自宅に帰されました。手術が済めばあとは治るのを待つだけ、という病院側の見方だったとは思いますが、日本ではありえない、とびっくりしたものです。20人近く入る大部屋に入っていたせいか、様々な症状の人がいて夜中寝られなかったから病院を出られてよかった、と本人は喜んでいましたが。さすがに自宅療法中には巡回看護婦が何回か様子を見に来てくれました。今回はPLDDの手術(メスを使わないでで穴を開けてする方法)だったので、比較的簡単に終りましたが、手術は手術、一晩病院で過ごして翌朝帰宅するようにとの指示があったのですが、本人は昔の入院体験から遅くなっても帰ると頑張って、夜の11時頃に私が付き添ってタクシーで帰宅しました。

132.JPG  イギリスには日本の国民健康保険に相当するのが National Health Service (NHS)で、「ゆりかごから墓場まで」のうたい文句で知られている手厚い医療システムとして始まりました。財源は National Insurance、 健康保険料に当たります。収入に応じて引かれる金額は異なります。日本との違いは国民の負担がゼロ、治療も手術も医療費はすべて無料なのです。病院から出される処方箋の薬代は、薬の種類に関係なく一律二週間分が9ポンド弱(約1300円)で本人負担ですが、子供と60歳以上は無料です。戦後間もなく、チャーチル首相率いる保守党が敗れて労働党が政権を取ったのですが、その時の首相が現在の社会保険/医療制度の法案を成立させたそうです。国民にとってはとてもありがたい制度ですが、その経費は年ごとに増え続け、現在ではとても間に合わず国の予算からも補填されています。139.JPGそれでもジョンが経験したような、病院の診療日の待ち時間が長い、緊急を要する手術以外は待たされる、救急車で運ばれた人が何時間も病院の廊下で待たされるというケースが度々起こります。診療日を待っている間に症状が悪化して亡くなってしまい、その後に病院から連絡が来るという冗談のような話も実際にあったそうです。国会でも度々問題となり、医療予算も増えていますが、NHS自体の組織形態にも問題があり、抜本的な改善はむずかしいようです。去年にはジュニアドクター達の労働改善を掲げてストライキが起こっています。最近はまた、日本と同様に老齢化が進み、老人の医療費が負担となってきています。長期入院の末、戻る場所がなくなったお年寄りが占める病院のベッドの割合が増えてきているのが実情です。しかし、日本のように一つの病院に三ヶ月しかいられない、ということはないそうです。老人問題に加え、移民、そして、肥満が原因の成人病、麻薬/アルコール中毒の治療などもすべて無料で行っているので、NHSの負担は膨大なものと想像します。プライベートの医療保険もありますが、保険料が高く裕福な人以外は加入できないのが現実です。

135.JPG日本の医療システムとのもう一つの違いは病気予防にあまり力を入れていない点です。私の経験から乳がん、子宮ん、大腸がんの検査の知らせだけはあるのですが、日本だったら健康保険に入っていれば誰でも受けられる定期健診の制度がないのです。ジョンに聞いたら、NHSとしては検診で病気の可能性のある人までめんどうはみられない、といったところらしいです。子供の医療に関しての知識は私はまったくないのですが、これもジョンによると、母子専門のクリニックがあり、子供の具合が悪い時はいつでもそこで診てもらえる仕組みなっているとのこと。麻疹等の予防接種も強制ではなく親の判断で母子クリニックでやってもらうそうです。

長くイギリスに住んでいる私も入院の経験こそありませんが、レイノー症状(免疫性の難病)が出て長期に渡って治療を受けたり、ころんでひびが入った手首にギブスをはめてもらったりと、NHSにはお世話になっています。その度に治療費が無料なのでありがたいとは思いますが、大病をしたら日本に帰って治療したほうがいいのかしらねえ、とは日本人の友人との話題です。将来、どういう形でかはわかりませんが、国民の医療費の一部負担は避けられないのでは、と思えるのですが。

137.JPG
4月に入り大分春めいてきました。庭のあちこちに花が咲き始めたので、いくつか撮ってみました。ふきのような植物はルバーブです。今年は育ちがよくもう一回目の収穫があり、赤い茎を砂糖と煮てヨーグルトと一緒に頂きました。ハーブの花はローズマリー、何年か前に植えた小さな挿し木が1メートル位に大きくなりました。 一番上の建物はチェルトナムのジェネラルホスピタル(総合病院)です・