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Enjoy a day out in the English Countryside

イギリス人の骨董好き

イギリス人の骨董好き

2017年7月30日


平日、特に何も用事がない時の昼食は1時から始まるBBCのニュースを見ながら取る習慣になっています。時々、早めに支度ができテーブルに着いてテレビをつけるとニュースの前に必ずやっているのが「バーゲンハント」です。視聴者参加番組で、2人組が赤と青に別れ、それぞれ番組側から渡された300ポンドを元手に、骨董市で気に入ったものを何点か手に入れて、それをオークションにかけます。トータルして高く売れて利益が出た分をもらえる仕組みです。

10ポンド以下の安いものから、高くてもせいぜい150ポンド位のものなので、正しくは骨董品(アンティック)ではなく、bric-a-brac(売買するほどの価値のある古い雑貨とでも訳すのでしょうか)が当てはまると思われます。

品物は様々です。陶器、飾り物、アクセサリーなどなど、こんなものまでと思うようなものもあります。自分で選んだものがオークションで何ポンドで売れるか、一喜一憂する参加者はとても楽しそうで、この番組が人気があるのがわかります。

平日の午後にはこの種の番組が他にもいくつかありますが、骨董関係で一番の人気はなんといってもBBCの「アンティック ロードショー」でしょうか。

日曜日の午後8時のゴールデンタイムに、BBCの花形女性アナウンサーが毎週変わる開催地、りっぱなマナーハウス、教会の類の建物の由来の紹介から始まり、大きな敷地内で、一般の人たちが持参する骨董品を専門家に鑑定してもらいます。こちらには正真正銘のアンティックが登場します。世界各地に植民地を持っていた大英帝国末裔の人たち、のせいかわかりませんが、イギリスに限らず、外国製の大きいものは家具の類から、小さいものではアクセリーと鑑定の対象になる品物は実にさまざまです。

 

骨董品の売買が行われるオークション(競売と日本語で言うとあまり響きはよくないですが)というと、日本では有名な絵画とか亡くなった有名人に関するものなどを扱うサザビーズとかクリスティーズぐらいしか知られていませんが、イギリスでは大きめの町にはどこにもオークションハウスがあり、小規模ながら定期的にオークションが開かれる身近な存在で、チェルトナムにも存在します。

オークションに先立ち、売られる品物を展示する日が設けられ、興味のある人はそこでじっくり品定めをしてオークションに臨みます。

美術的な価値がある骨董品と、一般の人でも気軽に手に入れられるbric-a-brac の差こそあれ、イギリス人が古いもの好きであることには変わりありません。日本では骨董収集というとお金持ちの趣味、と受け取られ勝ちですが、イギリスではもっと幅広く、気軽に好きなものを蒐集している印象があります。ジョンの叔父さんは日本の根付の蒐集が趣味です。

ジョンと知り合ってしばらくして、叔父さんに紹介された時に、そのコレクションを見せてもらったのですが、恥ずかしながら、その時、初めて日本の古い「根付」の存在を知った次第です。根付の細かくて繊細な彫り物にびっくりした記憶があります。何十個かあるコレクションの中にはかなり高価そうなものもありました。

いわゆる美術的に価値がある骨董品とは別に、コレクタブルと呼ぶ品物もあります。日本の「何でも鑑定団」でも時々、古いおもちゃ、メーカーが期間限定で出したグッズとか、数が少ないゆえに価値があるもの、が紹介されますが、これは万国共通でどこの国にもコレクターがいるのではないでしょうか。

大きいものではクラシックカー。コッツウォルズでも週末になると、30年代、40年代の映画に出てくるような古い形のオープンカーを楽しそうに(そして、得意そうに)に乗り回す人をよく見かけます。ジョンとしばらく東京に住んでいた頃、ジョンの同僚のイギリス人に、日本で007のジョームスボンドグッズを探して、インターネットで売っていた人がいました。007に関するものなら何でも買い手がいる、とのことでした。求める人がいるからこその市場、古いものに価値を見出すイギリス人。いつの時代も骨董市場が盛況というのも納得です。

残念ながら、ジョンも私も骨董品はもちろん、Bric-a-brac にも興味がなく、家の中はガラクタの類ばかりです。ところが、ジョンのお母さんが亡くなり、彼女の持ち物だったものがどっさりと運ばれてきました。定年まで高校の校長先生の秘書をしながら、夜間のクラスでも速記とタイプを教えていた努力の人でした。生活にも余裕ができたのでしょう、中には、クリスタルのグラス、ウェッジウッドの食器のセット、銀製品、高価そうな動物の置物などが入っていたのです。ジョンは、そのうちに専門家のところに持っていって見てもらおうか、と言っています。自分のものでもないのに何となく楽しみです。

ステインクロスを訪れるお客さんの中に、アンティックショップに行きたいのですが、という人が時々います。コッツウォルズの村にある、手軽な値段で、スーツケースに収まる小物が並ぶお店がお目当てです。確かに、さまざまな品がぎっしりと並ぶ中から、気に入った古いイギリスらしい模様のカップ、お皿などを見つけるもイギリス旅行のいい思い出になるのではないでしょうか。

写真のアンティックショップはチッピングカムデンにあります。
バラの花で飾った入り口のアーチは Blockley の村の教会です。前日に結婚式があったらしく、内部も同じバラできれいに飾られていました。赤いバラが這う家も同じ村にあります。村を抜けて野原に出て撮ったのが下の写真です。今回、教会と赤いバラのつたう家以外の写真はジョンが撮たものです。野原の写真は、石垣と野原と遠くに見える家のグラジエーションがいいと本人は言っていますが、どうでしょうか?