ミュンヘンの休日

今年の秋の休暇は一週間ドイツのミュンヘンで過ごしました。 　去年までの３年間はずっとスペインの海岸で、三ケ所とも小さな町だったので、ミュンヘンのような、ドイツで３番目に大きな都市での休暇は珍しいことです。　たまたまテレビの番組で、きれいな街並みとおいしいパン屋さんを紹介していた、という単純な理由で決めたミュンヘンです。　ところが、ホテルを予約した後に、街歩きには特に興味がないジョンが、ミュンヘンがあるババリア地方はチロルの山域に近いことから、週の後半は山を歩くと言い出しました。　結局、４日目から一週間の行程でキャンプ道具を背負って山に入り、二人用に借りたはずのキッチン付きのホテルの部屋には帰国まで私一人で過ごすことになりました。　マイペースで動けるのは嬉しいのですが、外国の都会で一人でうまく行動できるか、との不安も少しありました。　ヨーロッパの町の一人歩きはスペイン巡礼を最後に９年ぶりなので、間違った電車に乗らないようにとか、忘れ物をしないようにとか、と気をつけながら街を歩いていました。

結果、なんとか予定通りに旅程をこなして無事にチェルトナムに戻ってきました。　ミュンヘンは都会と言っても、中心地から１５分も歩けば大きな公園があり、トラムで簡単に郊外の宮殿にも行けるので、意外と行動しやすかったのです。一週間電車やバス乗り放題の切符を購入できたことも幸いでした。　最近はどこも切符売り場がなく、機械使用がほとんどなので、機械の前でおろおろすることもなく行動を楽にしてくれたのです。　改札がなく自由に乗り降りはできますが、時々検札があり、切符を持っていないと６０ユーロの罰金が課されるとのこと。　空港と市内との往復の他、毎日、何回も電車、バス、トラムと乗っていたのに一度も検札はありませんでした。　市民はちゃんとそれなりのチケットを所持しての利用なのでしょうが、採算は取れているのか、と疑問に思ったことです。

離宮の中側の広い庭。映画のロケにも使われたことがあるそうです。王宮の建物の中もとてもりっぱでした。

ミュンヘンを中心とするババリア地方は風光明媚な、オーストリアのチロルやスイスと似たような牧歌的な風景が広がっています。ジョンが縦走の起点としたフッセンの町。　ここはドイツ観光で一番人気のノイシュバンシュタイン城に近く、私たちが乗ったフッセン行きのバスは満員でしたが、町の手前のお城近くで私たち以外の全乗客が下車しました。　私は20代の時にお城を見ているのでバスです。　街を散歩した後、山に入るジョンを見送ってミュンヘンに戻ってきました。　その後、もう一日、日帰りで出かけたのが、オーストリア国境の近くにある、ミッテンヴォルトです。　街のすぐ後ろはチロルの山で、乗ったバスの終点はオーストリアのインスブルックでした。　ここは仙台に住む私の文通友達のお薦めの町です。　彼女は何年か前に一か月間、ドイツ国内を旅行した際、この町に三日間滞在したとか。　青空を背景に、なんともメルヘンチックな感じのかわいい街並みでした。

今回、ミュンヘンに一週間滞在して感じたのは、「豊かな町」の印象です。　中心地にあるりっぱな歴史的建物の数々、迷子になりそうなほど大きな中央駅から出ている充実した交通網、きれいに手入れをされたガーデンや公園などなど。　１０月に開催されるビール祭りの期間はとても賑わうそうですが、私たちが訪れた１１月初旬は、観光客は多かったものの、オーバーツーリズムというほどではなく、宮殿も博物館入場も並ぶことはなく、ゆっくりと観て回れました。ドイツは美食の国ではありませんが、ソーセージもシュニッツエル（豚の薄切りをカツレツ風に上げた料理）もドイツパンも美味でした。普段は暑い時期にしか飲まないビールも、スーパーの棚に並ぶ豊富なビールの種類につい買ってしまい、ホテルの部屋で一人で本場のドイツビールを味わいました。　天気に恵まれたせいもありますが、少し緊張感もあった今回の休暇は久しぶりに異文化を楽しめた一週間でした。　ジョンも感動的にきれいだった、というチロルアルプスの山を堪能したようです。