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Enjoy a day out in the English Countryside

イギリス版 D.I.Y.(Do it yourself)

イギリス版 D.I.Y.(Do it yourself)

2014年10月23日

10月も中旬を過ぎ、ステインクロスもシーズンオフに入りました。日本の10月というと、さわやかな秋の青空を思い浮かびますが、イギリスの10月はもう晩秋、天候も不安定で雨が多くなり、月末の週末には冬時間に変わり、冬が近いのを感じさせられます。

今年の春先にジョンが、シーズンが終わったら二階の客室の壁紙を変えるから、と言っていたのですが、その時期が来たようです。 15年前にこの家に引っ越してきた時に張った壁紙なので、まあ古くはなってきてますが、日本人の私からみると、変えるほど汚れているようには思えないのですが、そこはイギリス人です。普段は整理整頓という言葉には無縁な人なのに、家の中の修理となると、とてもよく気がつきます。これはジョンに限らず、一般にイギリス人の家にかける気の使い方は日本人の比ではないように思えます。 家は財産、という考え方が大きな理由の一つでしょうか。この国では、新しく開発された住宅地は別として、一般的に家を購入する際は既成の住宅から自分の希望に合ったものを選び、内装を自分の好みに変えていきます。木造とは違い、建材がレンガや石、しかも地震がない国なので、何十年も経った家(古いコテッジは何百年も)でも十分に住むことができます。手入れをきちんとしておけば、売る時に(よっぽどの不景気にならない限り)家の価値は上がることはあっても下がることはないのです。一生同じ家に住む人もいますが、普通は生活の変化に伴って住み替えていきます。子供が増えれば、大きな家に、子供が独立して家を離れ、歳をとってくると、階段のない平屋の家や老人用の住宅へ、と一生のうちに何回も引越しするのはめずらしくありません。 家は財産という感覚以外に、自宅をきれいにしておくという情熱みたいなものがイギリス人の国民性としてあるように思えます。家の修理も、業者に頼むと高いので、水回り等しろうとにできない作業以外はできる限り自分達でするのが普通です。

diy oct 2014 020.JPGdiy oct 2014 026.JPGそこで活躍するのが、D.I.Y の店です。どこの町でも郊外に必ずDIYの店があり、巨大な店の中にはDIY用のありとあらゆるものを売っています。壁紙一つとっても何十種類もあり、好みが千差万別なのでしょうが、日本人の感覚からすると、こんな色の壁紙を買う人がいるのか、と思うようなものもたくさん置いてあります。それほどの種類があっても、私達の希望する、部屋が明るくみえて、おとなしい色と模様となると意外に少なくて、DIYの店を回り、やっと3軒目でこれなら、という壁紙を見つけた次第です。

壁紙の張替えという作業も、やり方を知らないとなかなかむずかしく、イギリスに来るまでDIYにはまったく縁のなかった私はひたすらジョンの指示通りに動くだけです。壁紙剥がしにしても、糊で貼り付けてあるので、濡れた布で湿らせてからヘラでこそげ落としていきます。蒸気を当てる専用の道具もあるそうですが、我が家にはそんなものはなく、ヘラと濡らした布でひたすら剥がしていきます。ヴィクトリア時代に建ち、築120年以上の古い家なので、天井が高く、はしごを使ってのやりがい(?)のある作業です。全部剥がし終えると、シュガーソープという液体の洗剤で壁全体を洗い、乾くと今度は石鹸分を落とすためのリンス。壁に少しでもへっこみやひびがあると、平らになるように埋めていき、壁の表面全体をスムースにしてやっと新しい壁紙を張ることになります。これもきれいに張るには、模様あわせ、や壁と紙の間に空気が入れないように、などのテクニックが必要なので私の出る幕はなく、ジョンの仕事となります。たかが壁紙の張替えですが、せっかちな日本人にはため息がでるような時間のかかる作業です。 不器用な人でも張り切って家の修理を始め、そのうちに収支がつかなくなってプロに頼むはめになり、DIY が Destroy it yourself になってしまうケースも少なくないと聞きます。 壁紙張りの後も、今年は、天井、各部屋のドア、階段の手すりのペンキの塗り替え作業も待っています。ペンキだって下塗り用、つやが出るもの、水をはじくもの、などなど、知識がないとまったくお手上げです。イギリス人は小さいうちからそうした内装作業慣れしている環境で育つのでしょうか。

以前、日系の会社で2年ほど働いていたことがあります。12月のクリスマス商戦の忙しい時期にイギリス人の販売マネージャーが一週間の休暇を取ったのですが、その理由が、クリスマス前に家をきれいにしたいから、と聞いて、他の日本人スタッフと2人で目が点になったことがあります。日本の会社では考えられないことですよね。というわけでイギリス人の家はどこもきれいにしているお宅が多いのですが、家と庭にかける情熱もいいけど、それを少し食生活の改善にも向けたら、と一言言いたくもなるのです。

上の写真はDIYショップの中。先が見えないくらいの広さです。真ん中はずらりと並んだ巻いた壁紙、長い棚が3列もあります。下は私達が買った壁紙で、一巻12ポンド、一部屋用に7巻購入しました。