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Enjoy a day out in the English Countryside

イギリス英語について

イギリス英語について

2015年3月22日

先日、ラジオのニュース番組でスコットランド独立党の女性党首へのインタヴューをやっていました。去年のスコットランド独立国民投票での敗北を受けて、男性の党首が辞任、その後に副党首だったその女性が党のリーダーに選ばれたのですが、私が興味を持ったのは政策の話の内容ではなく、彼女の英語のアクセントでした。あまり強くはありませんが、スコットランド特有の話し方が耳に柔らかく響いたのです。イギリス英語と一口で言っても様々です。日本と同じように各地方にはその土地の方言があります。同じスコットランドでも、エジンバラと第二の都市グラスゴー(電車で30分ほどしか離れていないのですが)ではかなり違います。エジンバラの人の話す英語はクリアでわかり易く、グラスゴーはその逆で、イギリス人でも聞き取りにくいといいます。スコットランド以外でも、アイルランドにもウエールズにも独特の訛りがありますし、もちろんイングランドの中でも各地方ごとに方言が存在します。私の住むグロスター州の訛りはそれほど強くないですが、もう少し北にあるバーミンガムの方言はブラミーと呼ばれ、ちょっと鼻がつまったような話し方で、あまりきれいには聞こえないとの評判です。

私が初めてイギリスに住んだのは北部のマンチェスターでした。日系の会社で二年ほど働いたのですが、そのオフィスでイギリス人の同僚の英語を理解するのに苦労したものです。イングランド北部全体に言えることなのですが、話すときに口を広く開けないせいでしょうか、言葉がくぐもるように聞こえるのです。一つの例として、アの発音がウになり、Sunday,Monday がスンデイ、ムンデイとなります。マンチェスターからそれほど離れていないビートルズの出身地、リヴァプールの訛りも独特で、時々、映画やテレビのコメデイの舞台に使われます。ロンドンの下町言葉、コクニーもわかり難いことで知られていますが、昔、罪人がオーストラリアに流民として送られ、その人たちの話し言葉であったコクニーがオーストラリア英語に影響したことはよく知られた事実です。

英語の話し方には、方言とは別に、イギリスに残る「階級制度」も大きく関係しています。普通、強い訛りで話すのは庶民(労働者階級)で、中産階級(これも厳密にはいくつか層が別れるそうですが)、王室、貴族などの上流階級にはまた違った話し方が存在するとのこと。生活環境によってアクセント、話し方が違ってくるのです。労働者階級の人は15,16歳で学校を終える人が多く、訛りの強いスラングの多い話し方、高等教育を受けた親の下で育った子供はそれなりのキチンとした英語、そして大学に行けば、その話し方がもっと磨かれて洗練されるというわけです。002.JPG004.JPG

イギリス人は話し方でその人の生活のバックグラウンドがわかる、といいます。訛りこそあれ、誰もがほとんど同じように話す日本人にはちょっと理解しがたいです。そんなわけで、経済的に余裕のある家庭の親は子供達を、さまざまな家庭の子が行く公立の学校ではなく、できれば私立の学校にと願うわけです。学校にもよりますが、学費は日本の私立よりも何倍も高いそうですので、かなり裕福な家庭の子供しか行けませんが、その私立の学校で身につける(学力もですが)英語が大事というわけです。プリンス ウイリアムと結婚したケイト妃とキャメロン首相の奥さんが同じ私立の名門学校出身ということで一時話題になりました。公立にもグラマースクールと呼ぶ、一定の成績以上でないと入れない学校があるので、普通の家庭の子供達はグラマースクールを経て大学に進学します。何年か前に、公立の学校を出た成績優秀な女の子がオックスフォード大学を希望したのですが、面接で落とされ、後にアメリカのハーヴァードに特待生として入ったことで、オックスフォード大学が私立校からの生徒を優先する傾向にある、と問題になったことがあります。ちなみにイギリスでは各大学の入試はなく、Aレベルという全国一斉に行われる試験の結果と希望する大学との面接で入学が決まります。

チェルトナムには私立の学校が4校あり、11歳から18歳までの子供を受け入れています。中でも、チェルトナムレディズカレッジとチェルトナムカレッジ(今は共学ですが、以前は男子のみでボーイズカレッジと呼ばれていました)の二校が有名です。ボーイズカレッジの方は、昔、大英帝国が存在していた時代に、海外に赴任した軍隊の仕官の息子達を主に受け入れていたそうです。いかにもイギリス的です。チェルトナム近辺から通う子供もいますが、寄宿舎に入る子供の方が多いし、海外からの生徒も大勢います。006.JPG我が家の周辺にはレディズカレッジの寄宿舎がいくつかあり、すぐ近くにはスポーツセンターもあるので、学生達が頻繁に家の前を通ります。行きかう女子中高校生たちのおしゃべりを聞いても、私にはそれほど「特別な?)英語」には聞こえないのですが。。聞く人が聞けばその違いがわかるのでしょう。 イギリスに来てみて初めて誰もが、いわゆるきれいな発音でわかりやすいBBC(日本のNHKにあたる公共の放送局)的 Queen’s English を話すわけではないのだ、と実感する人も多いのではないのでしょうか。

一番上のりっぱな建物は学校とは思えないチェルトナムカレッジの校舎です。
右側はその学校の広い敷地に植わっているクロッカスの群生。
下はレディスカレッジのモスグリーンの制服を着た女子高校生。後ろから撮らせてもらいました。