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Enjoy a day out in the English Countryside
私達の休暇
例年、仕事柄、春先から10月中旬位まではチェルトナムを離れることはほとんどありません。旅好きの私としては夏が過ぎた頃からどこかに行きたくてうずうずしてきます。今年は8月中旬になっても10月の予約がゼロだったので、いつもより早めに休暇に出ることになりました。普段イギリスに住んでいるせいか、年一回の休暇では同じヨーロッパとはいえ異文化の国に魅力を感じます。休暇(旅行)の過ごし方はそれぞれ違うと思いますが、我が家はジョンが一般的な観光にはまったく興味がないので、毎年一緒に出かける時は休暇イコール山歩きとなります。 今年はスロベニア、キプロス島などが候補に上がったのですが、シーズンオフに入っているせいか適当なフライト(手頃な料金とそれほど遠くない空港利用)が見つからず、ジョンの意向でまたまた地中海側のフランスとなりました。フランスはハイキングのルートがしっかりしていて情報が入り易いのも理由の一つです。
去年はフランスのニースから電車でイタリアのジェノア、そこからイタリアンリヴィエラに沿ってチンクエテッレと呼ばれるけわしい崖沿いに点在する世界遺産にも登録されている5つの古い村があります。その村々を繋ぐフットパスを歩いたのですが(このコースは有料で各村のはずれに料金所があります)、今年もフランスのベジエという小さな町からパルピニョン、スペイン国境にかけての海岸線となりました。気軽に他のヨーロッパの国に行けるのはイギリスに住む利点です。特に最近は格安の飛行機があり、それをうまく利用するとかなり安く行けます。今回は東京から私の古い山友達が一緒に行くことになりました。宿はアパート形式のキッチン付きが最近の好みです。以前は山歩きが目的なので、テント持参でキャンプやユースホステルもあり、だったのですが、最近は歳のせいかジョンの方から普通のホテルを、との希望です。キッチンつきのいいところは自分達で食事を作れることです。旅行の間位食事作りから解放されたい人も多いと思いますが、毎回の外食は場所探しにも時間がかかり、当たり外れも多いので、私は現地の食材で簡単ではありますが料理するのが楽しみの一つです。特に南ヨーロッパは食べ物がおいしいので、夕食はスーパーやパン屋さんで買ってくるパン、チーズ、生ハムにワイン、プラス、豊富なレタス類でサラダを作り、メインにはパスタ、ソーセージを食べたりしています。ハイキングの日はサンドイッチ、街見物の日の昼食にはレストラン、とパターンも決まってきました。宿のキッチンに必ずコーヒーメーカー、ワインオープナー、それにサラダスピナー(野菜の水切り用)が付いているのはフランスというお国柄でしょうか。
ハイキングはパルピニョンから電車で1時間ほど入ったピレネー山脈のふもとを、次はもう少しスペイン国境よりのコリオールという小さな海岸沿いの町に移動、そこを基点に海岸に沿ったフットパスを2日間歩いてきました。この地方を歩いていると、丘の上や町の中に城砦(砦)をあちこちで見かけます。パルピニョンにも、コリオールにも、そして、ピレネーのふもとの小さな町も城壁で囲まれていました。南フランスの気候が良く風光明媚な景色を眺めていると、この地方の人たちが「自分達の土地を守るための戦いの歴史」を想像するのはなかなかむずかしいことです。コリオールから電車で20分乗るともうスペインとの国境です。閑散とした国境の駅でスペインの電車に乗り換えましたが、パスポート等のチェックはまったくなしです。そこから電車、バスを乗り継ぎ山を越えて着いたのが小さな入り江にあるカダケスです。奇才、サルバトールダリが住んでいた地として知られています。スペイン南部にある白い村は有名ですが、この町も白く塗られた建物が多く、観光地ではありますが、季節はずれのせいか静かでこじんまりとして、とても魅力的な町でした。着いた翌日、ここでも近くの岬までハイキングです。フランス側では海岸沿いの斜面はブドウ畑が多かったのですが、ここではオリーヴ畑が一面に拡がっていて、どの木もたわわに黒い実をつけていました。収穫の時期には遅すぎると思うのですが。。。 リアス式の入り組んだきれいな海岸も夏には観光客が押し寄せて人口が何十倍にもなるそうです。レストランもフランスより安めで、イギリスでは食べられないシーフードもおいしく、すっかりカダケスを気に入ってしまいました。
この町からジョンは一足先にイギリスに戻り、私と友人はせっかくなのでバロセロナまで足を伸ばして「観光」です。再びバスと電車を乗り継いで着いたバロセロナは快晴のせいもあり、いかにもスペインの町らしい明るい雰囲気でした。ガウデイの圧倒的なサグラダファミリアを見学、広場のバルでビールを飲み、港の階段に腰掛けてのんびりと海鳥を眺めて、と大勢の観光客にもかかわらず休暇最後の日を楽しく過ごしてきました。
一番上の写真はピレネー山脈のふもとにある小さな村の教会、2番目はピレネーのふもとのハイキングコース、3番目はコリオールの街(町外れの丘の上にも町中にも城砦がありました)。その下がカダケス、岬へのフットパス、屋根の上に卵の彫刻(?)がある白い家はダリの生前の住居で現在はミュージアムになっています。
今回、フランスの小さな範囲ではありますが、訪れてみてフランス人の休暇の過ごし方が覗けたのは興味深いものでした。フランス人はバリ際のあと、民族大移動的に休暇に出かけ、8月のパリは観光客だけ、というのは有名ですが、気候いい上、大西洋側にも地中海側にも海岸があるせいか、自国で休暇を過ごす人が多いようです。平均一ヶ月という長い夏休暇を自炊しながら過ごすのでしょう、私達が借りたようなアパート式のホテル、貸家、それとキャラバンやキャンピングカー用のキャンプ場をたくさん見かけました。ハイキングの途中に寄った海岸の小さな町にはなんと10箇所以上のキャンプ場があるそうです。 フランス人の長い休暇に比べ、イギリス人は一週間か、長くても二週間です。イギリスの海岸のリゾート地にもキャンプ場があり、子供や犬がいる家庭に人気があります。一般的にはイギリス人は一週間単位でホテルやゲストハウスに滞在し、こうした宿のほとんどのは二食付きです。残念ながらイギリスは夏でも太陽の保障がないので、今は国内よりも、安いパッケージで行ける南ヨーロッパ、特にスペイン、ポルトガルの海岸が人気です。スペインの地方によっては、海岸に沿って高層ビルのホテルが並び、街を歩くとフィッシュ&チップスの店やパブがあちこちにあり、ここはイギリスか、と錯覚するくらいです。 年が明けてクリスマス休暇が終ると、さて今年のホリデイはどこにしようか、と、旅行社に並ぶ分厚いパンフレットを取り寄せて行き先を選ぶのがイギリス人の楽しみです。私達の帰りの飛行機はバロセロナからバスで1時間ちょっとのジローナ空港からでした。小さな飛行場ですが、利用者が多いのはコスタ ブラーバという大勢のイギリス人が休暇で行くリゾート海岸の近くにあるためです。10月の後半という時期にもかからわず、私達の飛行機は遅い休暇を取ったイギリス人で満席でした。
帰ってきたチェルトナムは秋真っ盛り。今年は10月末になっても暖かく、天気も比較的安定していて、せっかくの好天気だからと、休暇から帰ってきた翌週末に一日コッツウォルドに出かけました。南ヨーロッパもきれいですが、イギリスの秋も北国特有の彩りで趣があります。天気がよければ、との条件付きになりますが。