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Enjoy a day out in the English Countryside

またまた巡礼の旅ーフランス編

またまた巡礼の旅ーフランス編

2019年11月5日

先週末に冬時間に変わったことがイギリスの冬が近づいてきたことを知らせてくれます。 我が家の周辺の黄色く色づいた木々の葉が風が吹くたびにハラハラと舞い落ちる様子は晩秋を感じさせて趣があるのですが、感傷に浸るよりも、ああ寒くなる、日が短くなる、と嘆いてしまうのは、寒さに弱くなった自分の歳のせいでしょうか。

9月の後半、最後のお客さんを送り出して、バタバタとパッキングをして慌しくブリストル空港からフランスのリオン行きの飛行機に乗り込みました。 私としては巡礼の旅はもういいかな、と思っていたのですが、めずらしくジョンの方からフランスの巡礼路を歩こうと言ってきたのです。
昔からフランスの自然が好きで、17歳の時に1人で南フランスを一ヶ月かけて貧乏旅行をしたのが始まりです。といっても食を含むフランスの文化とは無縁で、ただヴァラエティに富んだフランスの自然が好きなだけなそうですが。 国土がイギリスの二倍半、北はノルマンデ、ドイツ国境のアルザス、真ん中に位置する中央高原、スイスアルプス、南部のプロバンス、そしてピレネー山脈、と魅力に富んだ地方がたくさんあるのは事実です。 フランス国内からスペインのサンチャゴデコンポステーラを目指す巡礼路は何本かあるのですが、一番人気のあるのは何といっても、リオンの南部にあるルプイの町からスペインの国境に通じる巡礼路です。 全長730キロ、普通の速度で約一ヶ月かかりますが、今回、私達の予定は二週間半なので、行けるところまでと様子を見ながら歩くことにしました。フランスにはミッテラン政権下で、国内の歩道、山道の整備がされて何十本もの縦走路ができたそうです。それぞれにGR(Grande Randonee) の番号がついていて、「ルプイの道」はGR65になります。 道しるべもホタテ印や黄色い矢印のスペインとは違って、白と赤のちょっと縦長の印です。

オーブラック高地
オーブラック高地。 写真に小さく写っているのは前日私達を追い越していったフランス人の男性。 私達が歩いていると前方からやってきて、あまりにも景色がきれいなので、反対側からも一度歩いているそうです。

巡礼経験ももう3回目、ブログには書かなくてもいいかな、と思っていたのですが、歩いた結果、スペインとはまた違った田舎の風景、通り過ぎる村や町が予想以上に素晴らしく、一般の観光ではなかなか味わうことが出来ない経験だったこともあり、紹介してみたくなりました。 国際色豊かなスペインの巡礼路と異なり、歩いているのはほとんどフランス人と言っていいくらいでした。 国内でも人気のあるGRらしく、一週間、二週間と短期で歩く人も多く、春から夏にかけてはかなり賑わうとのこと。 私達が歩いた9月後半はもうシーズンオフで比較的静かでした。EU内で英語を話す人の比率が一番低いのがフランスだそうで、フランス語を話せない私達は疎外感を感じたことも間々ありました。巡礼宿での夕食の席でも、私達以外は全員フランス人またはフランス語圏の人ということも多く、フランス語が飛び交っていました。 ちょっとおもしろいな、と思ったのは、カナダのケベックから来た女性4人の家族と同席になった時です。母親らしい年配の女性がくせのある英語で、自分達をフランス人ととらえていたことでした。「だってあなた達カナダ人でしょう?」と聞いたら、「そうだけど、心情的にはフランス人よ」と。 娘さんの方はそれを聞いて黙って笑っていましたが。 ケベックに住み、フランス語で生活していても、若い世代は自分達はカナダ人と割り切っているようで、年代差で意識に差があるような印象を受けました。

馬で巡礼路を歩いている女性。ガイドブックに馬もOKという宿があります。
馬で巡礼路を歩いていた女性。ガイドブックに馬もOKという宿があります。 宿の近くに牧草地があります。

巡礼路を歩いているうちに、先月ブログで書いた食に関して私が書いたことが間違っていないなあ、あらためて思いました。 フランスの巡礼宿は全体に小規模で、個人、またはカフェの経営、公営、教会関係とさまざまですが、どこでも出てくる夕食がおいしかったのです。おおげさではなく、料理する人のおいしく作るという心意気が伝わってくるようでした。レストランの洗練された料理ではなく、その地方の田舎料理なのですが、スープ、メインに続く地元産のチーズ、そしてフランスでは定番のアップルタートと、食に関しては私には充実した巡礼の旅でした。

エスタンの町の教会
エスタンの町の教会

今回のコースには、フランスの美しい村として有名な村が何ヶ所かあったのですが、予備知識のなかった私は名前すら知りませんでした。 同じ路を歩いた日本人の人によると、深い谷の崖に沿って建てられた村、ロカマドゥール(この村は巡礼路GR65からはずれていますが)は、日本のテレビ番組、「1本の道」で紹介されたそうです。 でも、アクセスが不便なことが日本人にはなじみの薄い観光地になっているのかもしれません。 私達はこの村に辿りつくのに谷底に沿った道を7キロ歩き、今回終点となったこの村を離れるのに、電車の駅まで徒歩で(雨の中を)4キロ、そこから電車を乗り継いで地方都市のトゥールーズまで4時間かかりました。 観光バスか車でしか行けない不便な場所にあるこの村は、それでもフランスではパリ、ベルサイユ、モンサンミッシェルに次いで、4番目に人気のある観光名所だそうで、夏のシーズンには観光客で通りも歩けないほど混雑するそうです。

ジョンの後に付いて歩いた自主性のない今回の巡礼の旅でしたが、歩いてこそ味わえるこの国のよさを大いに感じた旅でもありました。

以下、巡礼路で撮った写真です。

 

 

 

GR65の巡礼路にある有名な村、コンクです。やはり深い谷の崖沿いに建物が建っています。 私達が訪れた時は小ぬか雨で、霧に浮かんだような建物が神秘的でした。

 

同じくコンクの村です。谷間を下りて見上げる教会はまるで映画の世界のように非現実的な風景でした。

 

GR65を離れてロカマドゥールに向かうGR6の途中にある、ここもフランスでもっとも美しい村の一つとして知られる Cardaillac (フランス語の発音がイマイチはっきりしません) 観光地のはずですが、たまたまでしょうか、私達が通った時はとても静かで、人影は前を歩くジョンだけでした。

 

巡礼路の傍らに建っていた小さな石作りの小屋。 古くはないのですが、風景にピッタリと溶け込んでいました。

 

こちらは青空のロカマドゥールの村です。 谷底を行く山道を歩いて村にたどり着いた時に撮ったものです。

 

ロカマドゥールの村は急な崖の上に建っていて、村は高さに沿って3段階に分かれています。 一番下の商店街から急坂を登ったところにある教会からの景色です。

 

ロカマドゥールのメインストリートの端。 写真の手前にはレストラン、お店が並んでいます。 写真を撮っていたら、写っているオランダからのご夫妻が近づいてきて、ひとしきりお喋りをしました。

 

バゲットの自動販売機をみつけました。
通りがかりの町中で見つけたバゲットの自動販売機。初めて見ました。どこのパン屋さんでもバゲットだけは1ユーロです。 誰にでも買えるように国から補助が出ているとのこと。朝食に、ランチ用のサンドイッチにと、フランス滞在中バゲットには随分とお世話になりました。

 

宿の朝食に出てきた型抜きされたバター
ド田舎と表現してもいいほど何もない小さな村の宿の朝食に出てきた型抜きされたバターです。 この地方は酪農が盛んでこのバターも農家から直接とりよせたそうです。 イギリスの朝のトーストのお供はマーガリンが普通ですが、フランスではどこに行ってもバターです。 バゲットにはバターと決められているようにです。 スーパーにはマーガリンも売ってはいるのですが。。。

 

道を歩いていたら、クルミ畑にいたおばさんがクルミをくれました。この地方はクルミ、栗の木を多く見かけました。かっては貴重な食料だったそうです。