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Enjoy a day out in the English Countryside
パブが再開しました。
記録的に雨が多かった今年の5月ですが、最後の週末はやっと前線が遠のき、高気圧に覆われてきれいに晴れてくれました。二週間前にまた一段階規制解除が進み、一般のお店、飲食店、プールなどが再開され、なんとか普通の生活が戻ってきました。それまでは飲食店の営業は屋外とテイクアウトのみに限られ、パブやレストランは外にテントを張ってテーブルを置いての営業でした。日中の気温がずっと15度前後と続く中、それでも週末には外のテーブルにお客の姿が大勢戻ってきていました。今も店の内部はスペースを取ってのテーブル配置ですが、コロナ以前のように営業ができるようになり、店主もお客もほっとしていることでしょう。
普通イギリス人がパブで飲むのはビールが多いのですが、テーブルにつく人以外に、カウンターの前に立って、親しい人と話ながらおつまみもなくひたすらビールを飲む、という光景が私のパブの印象です。昔からイギリスのビールは炭酸の入らない、常温で飲むエール系がほとんどで、日本人が飲むラーガタイプはなかったのですが、近年、このラーガ系が主流になってきたそうです。独特な味のエールはそれでも根強い人気があり、大手の会社で出荷している以外にも、それぞれの地域で独自の地元エールが置いてあります。 30年近く前、マンチェスターに住み始めた頃の週末、真冬のどんよりとした曇り空の寒い日に郊外に歩きに出かけ、帰りに寄ったのが小さな村のパブでした。ジョンが選んだのがマイルドエールというタイプ。一口飲んで、これがビール? と日本のビールしか知らなかった私はびっくりしたものです。まったく泡がなく、常温の茶色く苦くもない不思議な飲み物でした。それでも大きな暖炉の近くで、冷たくなった体を温めながら飲んだそのビールがおいしく感じられたのです。確かに寒い地方のビールでした。聞けば、北部に多いタイプで労働者が好んで飲んでいたビールとのこと。残念ながら最近の若い人にはあまり好まれず、今はマイルドエールを醸造所も減っているそうです。
ビールと並んでもう一つ、あまり日本では知られていないパブの飲み物にサイダーがあります。日本のサイダーとは別物です。主にリンゴ、洋ナシから作りますが、アルコール度は4-5度、炭酸入りの口当たりのいいやさしい味がします。リンゴの産地に行くと、男女を問わずビールよりもサイダーを選ぶとのこと。最近、チェルトナムにも郊外に大きなサイダーショップがオープンしました。生産者が異なる様々なクラフトサイダーが置いてあります。 フランスのノルマンディー地方もリンゴの産地で、この地方の人はワインの代わりにサイダー(シードル)を飲むそうです。これもイギリスに引っ越してから何年もしない頃、ノルマンディーに休暇で行った時のことです。小さな村の食料品店で地元産のシードルを買い、近くのベンチで飲もうとコルクの栓を開けたところ、ポーンと栓が弾けて中身があふれ出しました。まるでシャンパンのようにです。そのシードルがとてもおいしく、マンチェスターで飲んだビールと同様、私のサイダーの概念を変えてくれました。その後、フランスのシードルを買ってみましたが、あの村で飲んだものにはとても及びませんでした。何でもその土地の特産品は、その土地で味わうのが一番おいしいのでしょう。昔、東京で働いていた頃、真夏の暑い時期に仕事の後のビアガーデンのギンギンに冷えた生ビール、おつまみの枝豆と共に私にとってはなつかしい日本のビールの味です。
長く続いたロックダウンで、廃業したパブも多いと聞きます。イギリスの文化でもあるパブの存在。私たちはハイキングの後に寄るくらいでそれほど頻繁に行くわけではないのですが、カントリーサイドにある何百年もたつ建物の風情、内部のイギリスの古き良き時代を伝えてくれる雰囲気は大好きです。市街地にあるパブにはあまり思い入れはないのですが、街道沿いや村にある昔ながらのパブは絶対に消えて欲しくないイギリスの文化です。
以下、先週の日曜日に行ったチェドワースの村の近くで撮った写真です。近くにローマンヴィラ(紀元前終わり頃から400年間イギリスを支配していたローマ人の住居跡)があることで知られている村です。白い花はクイーンアンズレース(別名;カウスリップ)とサンザシ。例年は5月の中旬に満開になるのですが、今年は約二週間遅れですが、あまりにも見事だったので、何枚も写真を撮ってしまいました。