BLOG

Enjoy a day out in the English Countryside

イギリスの国民健康保険制度(NHS)の現状

イギリスの国民健康保険制度(NHS)の現状

2023年11月30日

イギリスの社会保障制度は「ゆりかごから墓場まで}という歌い文句でよく知られています。第二次世界大戦後、労働党が政権を取った時の首相、C.Atleeが作った健康保険制度ですが、70年を過ぎた今、このNHSの制度が危機に瀕しています。国民が払う健康保険料だけでは追いつかず、国家予算からもかなり補填されているのですが、それでもまったく足りていません。先日のニュースでは命に別状のない病気の治療を待っている人の数が8百万人達したと報じていました。2年前のコロナ終息時点では6百万人だったので、改善されていないどころか、さらに状況は悪化しています。今年はジュニアドクターや看護師を含む医療従事に携わる人達が待遇改善を求めてのデモが何回もありました。仕事がハードのわりに給料が低いそうですが、デモの度に治療を待つ人の数が増えるのです。

11月の始めにコッツウォルズを歩いていた時に見かけた黄葉です。日本の鮮やかな紅葉には及びませんが、周囲の風景に映えてきれいでした。

ジョンのお姉さんが先月、股関節の手術を受けました。大分前から手術が必要と言われていたそうですが、なかなか受けられず、担当のドクターの判断でお姉さんをプライベートの病院に送っての手術となりました。費用はNHSから出たので、本人の負担はなかったそうです。治療費が無料なので、基本、手術が済めばなるべく早い退院となります。通常、股関節手術の入院期間は2泊3日だそうですが、お姉さんは術後の体調がよくなく、入院期間は5日間になったとのこと。退院後は娘の家で二週間静養した後、独り暮らしの自宅に戻ったのですが、生活が落ち着くまでの三日間、ジョンが出かけていって身の回りの世話をしていました。退院後は定期的に訪問看護師が様子を見にきてくれ、リハビリは自分でできるようにとマニュアルを渡されたそうです。10年以上前になりますが、私の姉も股関節の手術を受けましたが、手術後のリハビリも含めて5週間位は入院していたと記憶しています。費用は一部負担してもきちんとした治療が受けられる日本の医療制度の方がずっとありがたいと思います。在英の日本人女性がガン治療で髪の毛が抜けた際に、NHSの負担でかつらを購入できたそうです。入院中のケアも悪くなかったとのことなので、NHSが普通に機能していればガン治療だけでなく、他の病気への対応ももっと丁寧になるのでしょうか。

晩秋でも丘の上の陽当たりのいい場所では花が咲くものです。 コッツウォルズのごく小さな村、Yanworth で見かけました。

治療や介護が必要な老人が増えるのに加え、成人病の患者も増加の一途をたどっています。イギリスの肥満率は国民の60%を超え、ヨーロッパでは最悪の数字です。その中でも、肥満度が高い Obese と呼ぶ、糖尿病、高血糖などの成人病の治療が必要な人の割合が26%、子供の肥満も多いのです。これから先、生活病予備軍の他、様々な病気を抱える人たちの数を考えると、いくら予算があっても追いつかないのは目にみえています。日本のように治療費の一部の有料化や介護保険の導入が必要と思われますが、この国の政党はNHSの構造改革には消極的です。一部でも治療費有料化の案件を出せば、国民の不評を買い選挙に勝てなくなるからです。何とかしなければ、と言いながら、どんどん状況が悪くなるイギリスの現状にどんな解決策があるのでしょうか。

同じ Yanworth の村の教会です。日曜日の午前なのに人の姿がありませんでした。礼拝は毎週あるわけではないようです。

ジョンの生徒さんで、駐在員の奥さんであるYさんは、先日お腹が痛くなり病院に行ったら「胆石」と診断されたそうです。手術の話になるとはっきりした返事を聞けず、Yさんはすぐに日本での手術を決めて帰国しました。3週間後、チェルトナムに戻ったYさんが、日本では診察、手術、といかにスムースに治療を受けられたかを語ってくれました。ちなみにYさんはご主人の会社の保険を使えて自己負担は少なかったそうです。歯の治療と同様、手術を要する病気になったら、高額のプライベートの治療を受けるか(高そう!)日本で治療を受けた方がいいのか。今のところ、膝の痛みは続いていますが、それ以外では特に持病はないのですが、いざとなったらやっぱり二本かな、と真剣に考えてしまいます。

ジョンが一人でハイキングに行った時に持ち帰った「キノコ」です。ジャイアントパフという食べられる種類だというので、炒めて食べてみたのですが、あまり味がなく、期待外れでした。